”住む世界がちがう” 恋。ーされど始めてしまった。 …単行本帯より
季刊ボーイズラブ誌『on BLUE』(祥伝社)に連載されたトルコを舞台にしたシリーズ。現代トルコの話とオスマン帝国時代の物語があります。トルコ語のクシュラル(kuşlar)は”鳥たち”の意。シリーズのすべてに鳥が登場するわけではありませんが、すべてに泣くシーンが出てきます。渡り鳥のように故郷を離れて行くといった意味も含まれるのでしょうか。全編せつなさに満ちたでも愛おしい異国の美しい物語集です。
CONTENTS |
発表順に紹介。
●初出:
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『onBLUE Vol.1』祥伝社 2010年12月10日(金)頃発売 ISBN:978-4-396-78301-3 A5判 P.157~188 |
●CHARACTER カルンジャ(karınca=蟻):本名はオルハン。ミマールの幼なじみ。 ミマール:イスターンブールに住む15才の少年。 |
●作品紹介 現代が舞台のお話。イスタンブールの片隅で暮らすミマールは、父親の出所に怯え、幼なじみのカルンジャとスクーターで逃避行に出る。ロードムービー風で、痛い立ち回りシーンもある読み応えのある1作。母親に暴力をふるう父親がいるミマールのやり場のない不安や恐怖と、カルンジャへの切ない想いが胸に迫ります。壁越しに存在を感じられるような建物の隣に住んでいることが、ここでの暮らしを伝えていると同時に救いにもなっていて、またもせつないです。 |
※単行本化の際、加筆修正、33ページにされています。
●初出:
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『onBLUE Vol.2』祥伝社 2011年4月25日(月)頃発売 ISBN:978-4-396-78302-0 A5判 備考:えすとえむ特集号 表紙・インタビューなども掲載 P.038~082 |
●CHARACTER ハカン:イェニチェリ(オスマン帝国の軍隊)の兵士 ――:キョチェク(女装の踊り子)♂ |
●作品紹介 クシュ(kus)はトルコ語で鳥の意。故郷から離れスルタンの奴隷として改宗し教育を受け、イェニチェリとなった兵士のひとりハカンは、各地の遠征先で鳥を集めていて少しまわりから浮いた存在である。栄えあるイスタンブルの街の酒場で美しい衣装をまとって踊るキョチェクにもとくに興味がないようだったが、故郷の唄を歌ってくれた彼に心を開き始める。 シリーズ中最も長い物語で、”鳥”が重要なモチーフとして登場します。描かれる小鳥たちのまあるい姿や小さなくちばしで鳴く様子が愛らしく、鳥籠から出た小鳥がすぐそこに止まっているように感じられます。 |
●初出:
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『onBLUE Vol.3』祥伝社 2011年8月25日(木)頃発売 ISBN:978-4-396-78307-5 A5判 P.187~218 |
●CHARACTER ケマル:進学校に通う裕福な高校生 アミル:男娼 |
●作品紹介 現代のイスタンブールのお話。観光地でもあるにぎやかなイスティキュラル通りの裏道に立つ美しい男娼に惹かれていく高校生のケマル。iPodを持ち、家族と海外へも行く育ちのいいケマルと、街の底辺のネズミ(=ファーレ:fare)と呼ばれる男娼アミルの立場や環境の違いからあらわれるやり取りの機微と、同じ年頃の繊細さが静かに描かれます。金を持った若い上客以上の何かが生まれつつあるところで物語は終わります。 ふだんは名前を訊かれないであろうアミルが名乗るところやアミルの目つき、ケマルが同級生たちと過ごすシーンも心に残ります。(それからアミルの左眉の傷跡?もとても気になります…。) |
●初出:
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『onBLUE Vol.5』祥伝社 2012年4月25日(水)頃発売 ISBN:978-4-396-78316-7 A5判 P.163~194 |
●CHARACTER オスマン帝国の王(スルタン)皇帝 陛下 ユラン:宮廷につかえる宦官 教育係 母后(ヴァリデ) |
●作品紹介 トルコ語のユラン(yılan)は蛇の意。 蛇のようだとささやかれる目つきも鋭いユランは皇帝の母、母后から信頼をされている教育係の宦官。皇帝は女を抱くことがなく、ユランに強い想いを寄せている。世継ぎができないことに母后はユランに手を尽くすよう持ちかけるが…。 単行本の最初を飾る宮廷物語。一途な皇帝、謎めいた宦官、はかりごとに長けたヴァリデ、臣下達のささやき。全編を漂う哀しさ妖しさ恐ろしさが、絹連れの音がしそうな衣装や宮殿の建物の描写からも醸し出されています。 |
※単行本化の際、加筆修正、34ページにされています。
●初出:『onBLUE Vol.6』祥伝社 2012年7月25日(水)頃発売 ISBN:978-4-396-78320-4 A5判 P.227~242 |
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●CHARACTER | |
カルンジャ:
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家族とドイツに住むトルコ人。ミマールの幼なじみ。本名はオルハン。カルンジャ(karınca)はあだ名で蟻の意。幼いころチビだったことからそう呼ばれた。 |
ミマール:
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イスタンブールに住む青年。 蟻の刺青をするほどカルンジャに想いを寄せている。 |
●ストーリー トルコシリーズ第1話「カルンジャ」の数年後の話。ドイツに移り住んだカルンジャのもとへ1800kmかけて会いに行くミマール。前回少年だったふたりは、おそらくもう成人していて、カルンジャのいとこの結婚式に出席する。そこで親戚から子供を持つよう言われたり、カルンジャの知り合いに「友達」と紹介されることに、ミマールは言いようのないやるせなさをつのらせる。体は重ねているけれど、カルンジャへの想いが深すぎるミマールの心中が痛々しい。作中では、相変わらず体の描線が綺麗です。 第1話で母親を守らねばならないとイスタンブールに残った彼へ、カルンジャが告げる言葉がおもいきり甘さを含んでいて、シリーズのラストにうれしい展開です。 |
●初出:単行本「クシュラル」描き下ろし 2012年10月25日(木)頃発売 |
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●CHARACTER |
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ユラン |
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皇帝 |
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●作品紹介 トルコシリーズ「ユラン」の続編。 ふたりの物語がぐっと大きく膨らんでいったらまた描いてほしいと思ってしまうような広がりを含んだ後日談。
内容ではないのですが、この作品はトーンを使用せず薄墨のようなもので描かれたようです。インタビューなどでトーン貼りが苦手で友人やアシスタントさんが貼ってくれている、薄墨の研究もされているようにおっしゃっていて、いつか試された成果を発表されるのではないかなーと少しお待ちしておりました。いろいろ大変とは思いますが、これからどのようにされていかれるのかも楽しみです。こちらの「クシュラル」は単行本の印刷の良さがよく出ていると思います。濃淡が思い切り出るようになっても表現としておもしろそうですね。 |
以上の作品はこちらの単行本に収録▼ |
『クシュラル』2012年10月 |
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